2.情報を伝えなくてもよい
暴論ですが、スケッチに何が描いてあるのか、わからなくてもいいという思いもあります。それが何であるのか、何処であるのか、わからなくてもいい。わかった方がいいですが、わからないからといってダメだとは言えない。画面上の線が楽しく描かれていて、面白ければ充分なのではないかと。
ワタクシや貴方は写生をしているのですから、それが何であるかわかるほうがいいに決まっていますが、それが何であるかわかるからいい絵である、というわけでもありません。それが何であるかわかり、かつ面白い絵がいいに決まっています。しかしそれは簡単に描けないかもしれない。何が描いてあるかわかるけど面白くない絵よりも何だかわからないけど面白い絵のほうが楽しいではないですか。学術的なイラストレーションを描こうというわけではないのですから。
昔、アルバイトでデザイン事務所のアシスタントをしていたことがありました。その事務所ではビジュアルを重視した科学雑誌の編集デザインをしていて、アシスタントであるワタクシの仕事は、イラストレーターに発注するイラストレーションの「下絵」を作るというものでした。イラストレーションは情報です。監修の学者の先生、編集者、アートディレクターが、その絵に盛り込まなければならない情報を整理して構図を決めます。ワタクシは編集者が集めた資料をもとに、その絵の細部を描いていきます。消しゴムで何度も修正しながら、詳細なイラストの設計図を作っていくのです。色もこの段階で決めて、アートディレクターや編集者のチェックを受け、イラストレーターの先生に渡されるのです。イラストレーターに求められているのは描写の技術で、下絵(設計図)通りに締め切りまでに描きます。プロの仕事です。
ワタクシや貴方がやろうとしているのは、そういうことではありません。完成品のクオリティではなく描く過程を気持ちよく進めようというものです。情報が伝わるかどうかは無視してよい、そもそも伝えるべき情報がないかもしれません。伝わってほしいことがあるとするなら、それは「楽しい」という事かもしれません。情報ではなくて情緒的な事なのかもしれません。
Q:スケッチを見せられたヒトの代表的な反応として、「これ何が描いてあるの?」というのがあると思います。
A:何が描いてあるのか知りたいヒトには言葉で説明してあげればいいのではないでしょうか。「バナナです」とか。
Q:バナナを描いてバナナに見えない絵というのは写生としてどうかと思いますが。
A:ですからバナナの説明をするためにスケッチをするのではないという立場もありうるということです。
Q:開き直りとも受け取れる発言です。
A:まぁそういうことです。
クロッキー用紙にサインペン、サクラクーピーペンシル
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